コールドスリープ/人体冷凍保存装置(前編)

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こんにちは、妄想管理人くいんです(笑) 
 
「コールドスリープ」って知ってます?SF映画に人体冷凍保存装置としてたまに登場するあれです。リアルな世界でもすでに冷凍保存されている人もいます(亡くなった人が対象だけどね) 
 
そんな感じで、コールドスリープに対して明るいイメージなんてなかったんだけど、堀北真希主演のドラマ『アタシんちの男子』の中にちょこっと登場した「コールドスリープ装置」の考え方は少し違っていたのさ。このドラマでは「好きな時代にタイムスリップできる装置」なんていうずいぶん前向きで明るい考え方をしていたので衝撃を受けたわけです。 
 
そのあと風呂に浸かりながら「もし自分がコールドスリープ装置を持っていたら?」なんて妄想をしていたんだけど、これがいつもより壮大な妄想になったので小説っぽくしてみましたよ(すーぱー素人ですけどね♪) 
 
 
近未来の設定です。 
はじまり、はじまり~ 
 



 
 
と数時間で長い長い人生も終わりを告げる — 
 
 
私の名は「くいん」。 
 
最も初期からコールドスリープ装置を使用している人間の一人だ。 
最期を迎えるその前に私の人生について書き記しておこうと思う。 
 
 
 
はじまりは一通の履歴書。 
 
 
起業したばかりのコールドスリープ社に 
大学生だった私は履歴書を送った。 
 
当時は専門家の間でさえその実用性を疑問視していた頃のことだ。 
 
 
 
その頃の私は何の夢も持ってはいなかった。 
何をしたらよいのかわからずにただ時間だけが過ぎてゆく日々。 
 
履歴書を送ったのも、そんな自分を実験台に使ってくれという 
なかば自殺希望で送った履歴書だったのだが、願いむなしく 
いくら待てどもコールドスリープ社から返事は返ってこなかった。 
 
 
 
 
月日は流れ、 
大学を卒業して社会人2年目のことだっただろうか 
仕事をしながら聴いていたラジオから「コールドスリープ社経営破綻」 
のニュースがひっそりと報じられた。 
 
社内の誰も気にとめるものはいなかったが 
私の全神経がその声に集中したことを覚えている。 
 
 
 
だが、世の中を悲観する後ろ向きな私はすでにいなかった。 
 
 
人生に色があるなら 
薔薇色の時代といっていいだろう。 
 
コールドスリープ社からの返事待っている間に 
出会った妻のおかげだ。 
 
妻が私の人生に変化をもたらし 
未来は一気に明るいものとなっていたのだ。 
 
 
 
 
しかし、当時の私はまだ知るよしもない 
 
コールドスリープ社が消滅しておらず 
一部の研究者が水面下で開発を続けていたことを。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「くいんさん、お届けものでーっす!」 
 
 
 
朝から、配達のお兄さんの元気な声がする。 
ホントにいつも元気な若造だ。 
 
何回目かのその声でしぶしぶ目覚めた私は玄関のドアを開けた。 
いったい誰の家と間違えている、、、 
 
目の前には大きなベッドと大きなダンボール箱が置かれている。 
階段のほうにもまだ箱が、、 もちろん注文した覚えなどない。 
 
玄関先でしばらくもめた後、 
それが私宛の荷物であることを唐突に理解した。 
 
 
黒地に白抜きのC.S.Iのロゴマーク 
 
 
確かに見覚えがあった。 
 
記憶の彼方に消えかけていた思い出が蘇ってくる。 
C.S.I(コールド・スリープ・インターナショナル)!? 
 
 
そして、この荷物こそが「コールドスリープ装置」であった。 
 
 
 
 
 
 
あとからわかったことだが、 
大学生時代、40年も前に送った履歴書の存在により 
装置の希望者リストに私が優先登録されていたようだ。 
 
(選ばれたのは全世界で合計12名。日本人2名のうちの一人が私であり、 
もう一人はMitsuko Moriという名前の女性であったと記憶している) 
 
 
 
この時、私は61歳。 
 
昔とは大きく変わったことが2つあった。 
ひとつは私をおじいちゃんと呼んでくれる孫ができたこと、 
もうひとつは妻がこの世からいなくなっていたことだ。 
 
 
 
 
 
なぜいまになって、、、 
 
 
妻の突然の死をきっかけに、 
二人ではじめて暮らした小さなアパートに移り住んでいた私は思った。 
 
久しぶりの一人暮らしにもようやく慣れてきた。 
 
もう、野菜を買いすぎて腐らせることもない。 
そんなときに突然やってきたコールドスリープ装置を前に 
昔無くした子どものオモチャを差し出されたような気分だった。 
 
 
もう少し早ければ妻のために使用することもできたかもしれない、、、 
しかし、きっと妻は信じてくれなかったはずだ。 
夫の頭がおかしくなったと思ったことだろう。 
 
妻が元気だったなら私も装置を受けとることなどなかったに違いない。 
むろん、使用することも、、 
 
 
だが結局、私は装置を試した。 
 
 
装置の中でそのまま死ぬ可能性はあったが 
年をとっても私は私だった。 
 
もう十分生きたじゃないか 
私がやらずに誰がやる? 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
20XX年07月24日 午前08時08分 
初めての「コールドスリープ」体験。 
 
 
 
 
今でも鮮明に覚えている。 
 
再び目覚めることができなかった場合に備え、 
何も知らない息子たち、孫たちのために手紙を残し 
コールドスリープ装置の上に横になった。 
 
 
年老いた顔がカプセルに歪んで映る。 
 
透明な半円状のカプセルに覆われたベッドを想像してほしい。 
それがコールドスリープ装置だ。 
 
おまえと出会う前じゃなくてよかったな、、、 
天国にいるであろう妻を想いながら目を閉じた。 
 
 
再び目覚める時間は 
ちょうど24時間後にセットしてある。 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ピィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」 
 
 
 
 
 
 
作動開始を知らせる小さくも甲高い電子音が頭に響く。 
 
 
その時がきた。緊張しながら 
何秒、何十秒間そうしていただろうか。 
 
だが何も起こらない。 
 
微動だにすらせずにしばらく様子を見守り 
そのあと恐る恐る目を開け私はカプセルを押しあげた。 
 
故障だ。 
 
 
それまでの緊張が一気にとける。 
寿命が縮む思いとはこのことだ。 
この装置は本物なのか? 
 
誰かの悪ふざけじゃあるまいな。 
 
 
 
 
装置への期待が疑心へと変わりつつあるなか 
あることに気付いた。 
 
設定パネルの現在時刻がさきほどより1日進んでいる。 
 
 
 
きちんと設定したはず、、、 
 
 
 
いや、設定を1日間違えたか。 
部屋の中に変わりはない。窓から見える景色にも何も変わりはない。 
ただ、先程まで外でキャッチボールをしていた親子はどこへ行ったのか。 
もう帰ってしまったか、、、 
 
 
なにかおかしい、、 
確認したいことがあるにはあった。 
 
 
テーブルの上のリモコンに手を伸ばしテレビをつける。 
すると、ニュース番組が明日の日付になっている、、、 
 
ほかにも、我が家にあるあらゆる機器が 
時間が1日進んだという事実を静かに指し示す。 
 
まさか?という考えが確信に変わる。 
 
カラダが震えはじめた。 
ゴクリと咽の乾きを確かめるが乾きはない。 
 
 
本当なのか? 
信じられるはずもなかった。 
 
 
なにより目を閉じてから 
1秒足りとも眠っていたという感覚がない。 
 
いったいいつのまに、、、 
 
 
私は24時間眠っていたというのか!? 
 
 
 
これが「コールドスリープ」、、、 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そう、世界は一瞬のうちに明日になっていた。 
 
 
 
 
 
 
 
後編につづく

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