建築家・黒川紀章の代表作「中銀カプセルタワービル」です。
中銀カプセルタワービルは「世界で初めて実用化されたカプセル建築」であり、工法もカプセルを鉄筋コンクリートのタワーにボルトで接続するという画期的なものでした。
また、この建物を語るときに忘れてならないのはメタボリズム理論の代表的な作品であるということ。
メタボリズム=新陳代謝
「有機体としての生物が新陳代謝しながら成長していくように建築・都市も建設されるべきであるという、世界的に知られる日本生まれの理論。」
黒川氏は25年ごとにカプセル交換を行うことを想定しており、その場合、この建物は200年もつと語っています。
中銀カプセルタワービルについて語る黒川氏の動画
なので、本来ならばメタボリズム理論を実践し25年ごとにカプセル交換を行ってきているはずなんですが、、、
現実には1972年の完成後、
一度もカプセル交換は行われていません———
そして、周囲に新しい建物ができてゆく中、「中銀カプセルタワービル」は肝心のメタボリズムを実践せず、竣工後30年数年が経過し、老朽化がすすみました。
さらには、アスベスト、雨漏りなどの構造的な問題もあり、、、2007年春、管理組合の臨時総会で大規模改修か建て替えかの決議が行われ、取り壊し、建て替えることが決定。
もうすぐ無くなってしまいます、、、
(地上14階建てビルへの建て替えが計画されているそうです)
画像は合成およびパースをかけて加工してあります。
汐留方向より撮影
■名称:中銀カプセルタワービル Nakagin Capsule Tower
■用 途 :集合住宅
■設計者 :黒川紀章
■高 さ :53.5m
■階 数 :地上11階(一部13階)、地下1階
■カプセル寸法(内部):幅2.3m×奥行き3.8m×高さ2.1m
■カプセル寸法(外部):幅2.5m×奥行き4.0m×高さ2.5m
■間取り :ワンルーム・10m2(4.5畳)
■総カプセル数 :140個
■建築面積 :429.51m2
■延床面積 :3091.23m2
■構造形式 :鉄骨鉄筋コンクリート造 一部鉄骨造
■施 工 :大成建設
■竣 工 :1972年4月
■所在地 :東京都中央区銀座8-16-10
↓詳しい説明はこちらをお読みください!
この建物の歴史的価値について、書いてあります。
※保存要望書なので少し持ち上げてる感もありますが、、、
中銀カプセルタワー保存要望書のURL
https://www.aij.or.jp/scripts/request/document/060728-1.pdf
管 理人は銀座で働いていたことがあるから、「中銀カプセルタワービル」を知らなかったわけじゃない。
カメラ屋めぐりの途中でチラッとみたことはあったし、王様のブランチで部屋を紹介してるのもみたことがある。
(いま考えると貴重な映像だったかも)
※家賃5万7千円~6万5千円(←管理費、修繕費含めると10万円程度らしい)
※購入価格550万円(←2008年1月時点の情報です)
ただ、この建物にメタボリズム理論というコンセプトがあったことは知らなかった。
それまでは、この建物は未来的だけどギクシャクしているなぁという印象。もっと、整然と積み重ねればいいのに と思ってたね。
例えるならルービックキューブを積み重ねたみたいにさ。
ギクシャク? 違う。 動的なのか!
でも、メタボリズムを知ってからは見方が変わった。あの丸い窓は細胞核にも思えるし、ギクシャクしていたのも細胞が生まれ変わる、生命力を表しているように感じるね。
さらにいえば、カプセル交換の際に生じる、各カプセルの経年劣化による色の違いなども考慮しての積み重ね方だったのではと思っている。(どうでしょうか?)
雑誌カーサで黒川紀章の特集ページがあったのだけれど、その中のメタボリズムに関する文章がとても気にいった。完全に同じではないかもしれないけど、こんな言葉。
『メタボリズムは時代の進化に対して、あまりに楽観的だったのではないだろうか?』
なるほど。
新陳代謝を意味するメタボリズムが衰退していった理由や、カプセル交換が行われなかったわけが、この文章のおかげで、理解力のない管理人にもようやく解った。
確かに楽観的だったんだろう。
備え付けのオーディオはオープンリール方式という代物だしね。内部の設備も個々に取り替え可能にしておけば良かったのかも、、、でも、時代の進化を先読みしろというのも酷だよねぇ
し か し 、
メタボリズムはそれでも先進的。
建て替えずに済むということは、省資源、省エネルギーであり、リノベーションで、リサイクル。エコだし、サステイナブル(持続可能な)だ。
いま、ようやく、時代がメタボリズムを必要としているのかもしれない。
(とか、カッコつけて言ってみたり~)
このカーサの特集ページを読んだおかげで無くなるまえに建物をじっくり観てみたい!と思い、ついこの間、2007年の12月30日(昼頃)に「中銀カプセルタワービル」へ行ってきました。
(仕事忙しくて会社に泊まった翌朝、その足で行ってきたよ)
行ったのが大晦日の前日ということもあったのか
歩いてる人も少ないし、この建物に足を止める人もいない。そりゃそうか。
中には入れなかったんだけど(見学お断りとドアに書いてあったので、、、)外にある展示用のカプセルを窓からじっくりのぞいたり、いろいろな角度から建物を観察し撮影することができました。
(走ってるクルマにはご注意を)
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↓展示カプセルの窓に記載されていた文章
カプセルとは「ホモ・モーベンス」のための住まいである。
黒川紀章
EXPO’70において建築学会に大きな波紋を投げかけたカプセル住宅。中銀では、21世紀の住宅形体はこれだ。その結論に達し経済工期、経済工費を追求して当カプセル住宅を商品化。世界でも初めてのカプセルマンシオンをここに実現しました。
(昭和47年3月完成)
プレハブ住宅の進歩に従がい現場生産中心の住宅形体も、昨今、工場生産部分が非常に多くなってきつつあります。中銀の当カプセル住宅は100%工場生産され、現場では取付(プラグイン)作業だけをするという画期的なものでした。これは正にカプセル住宅時代の幕明きと言っても過言ではないでしょう。
実 際にみてみると、
やはり老朽化していることがわかります。
壊れてるよね?
下部のカプセルはアルミテープで補修されてます、、、
構造的に修繕しずらいと聞いたことがあるけど、
外観も掃除していないようなので余計にそう感じさせるのかもしれない。
でも、デザインは現代でも未来的な印象だし、
この未来感はこの先も人々に好まれるのではないかと思う。磨けば見映えもよくなりそうだしね。
やはり、
この建物が無くなるのはどうにも残念だ。
12月30日時点では2階部分にテナント募集の張り紙があったんだけどね、、、
それに売りにでてる部屋もあるんですが、、、
中銀カプセルタワービルは、ホントに無くなるんだろうか?
(最新情報をご存じの方がいらっしゃいましたら教えてください)
鉄筋コンクリートのタワーシャフト
左に少し映っているのが展示カプセルの裏側です。
カプセルを取り付ける鉄筋コンクリートのタワーは
とても頑丈そうだったから、カプセルを交換をすれば大丈夫そうなのにね。
ただ、黒川紀章氏の亡き今、新規にカプセルを作るとなると黒川紀章作品じゃ無くなるのか? そんなことないのか?いまのままのカプセル内部だと設備的に時代とあってないし、構造的に雨漏りの欠陥があるみたいだし、、、
■現状のカプセルを補修してそのまま。
↑ 歴史的価値あり(メタボリズムはどうなる?)
■新規カプセルを製造して再取付け。
↑メタボリズムの実践(歴史的価値は下がる?)
う~む。
確 かにね。銀座の端っことはいえ、銀座だし、
開発が進む汐留に近くて立地もいいところなんだよね。
黒川氏のコメントによると、いまは外国のヘッジファンドが所有してるとか。
お金がからんでくるのはよくわかるけど、管理人としては修繕して現状のカプセルのままの博物館的ゾーンと新規カプセルにして実際に生活できるゾーンにわけてもらいたい!
管理人の好きな、ガウディ建築も実際に人が住んでる部屋もあって、それでいて見学できる部屋があるよね。
このカプセルタワーもそうしてもらいたいなぁ。中にも入ってみたいしね。
もう遅い?
んなこたー ない。
まだ、建っているじゃないか!
お金優先で建物を壊すのなら入場料をとればいい。
「中銀カプセルタワービル」グッズをつくろうじゃないか。
ロゴマークなら管理人がつくろうじゃないか(ダメ?)
2階フロアはグッズ売場&カフェにしようじゃないか。
黒川さんが勝手に言ったといって怒られた、
世界遺産候補にもしようじゃないか。
国内および、海外から来る旅行者たちの
東京ツアーのひとつに加えようじゃないか。
保存運営費を広告費でカバーしよう。
いくつかのカプセルを有名企業に貸して、広告をかねたカプセル部屋にするというのはどうだ!?
見学者が来るからいい宣伝になるぞ。
個展専用のカプセルを作るのもいいだろう。
占い専用や宝石販売専用でもいいさ。
アイデア次第でカプセルの価値はあがるし、
それが集客力につながると思うぞ。
建物を残したいという気持ちがあればこうやっていくつかのカプセルを開放することにより修繕費、維持費などのお金を生んでくれるはずだ。
この建物の価値を立地を最大限の武器にしよう。
壊して新しいビルを建ててもさ、
新しいビルなら他にいくらでもあるでしょ。
先 をみすえたら残すのが賢い選択だよ。
「中銀カプセルタワービル」には十分な価値と可能性がある。無くすことより活かすことを考えようじゃないか。
そして、
世界に発信してほしい、
メタボリズムここにありってな!
1970年代の写真達。過去にこんな未来があったとは驚き。
↑当時は1階が駐車場だったんだねー。
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追記:
クラウドファンディングで下記のプロジェクトが応援を募っています。
2015年8月14日23:59までに目標の金額に到達した場合のみ、ファンディングが実行されます。
「中銀カプセルタワービル」を未来へ!
世界遺産になりうる建築の保存・再生に直結する、ビジュアル・ファンブックの出版
追記:
目標金額に到達。おめでとうございます!
タービンホール[TURBINE HALL]by Tate Modern
こんなところに中銀カプセルタワービル!
パリを象徴する建造物「エトワール凱旋門」に登ってきた